仕込み水
水を守る取り組み
水を守る取り組み
水を原料とする酒造りにとって必要不可欠なのが、里山の保全。その水と里山を結び付ける形で、西条酒造協会が中心になって平成13年に設立したのが、「西条・山と水の環境機構」(理事長・前垣寿男賀茂泉酒造蔵主)です。産学官民が協働して、森を育て、水を守る取り組みは、全国的にも珍しく注目を集めています。
発足のきっかけとなったのは、松枯れなどによる山の荒廃。「環境をテーマに地域貢献活動をしたい」という前垣理事長の呼び掛けに西条の各酒造会社が理解を示し、西条酒造協会加盟の各社が酒の出荷量1.8㍑に付き1円を拠出することで、年間約700万円の活動資金を確保しました。
活動は、JR西条駅北側の龍王山(標高575㍍)にある憩いの森公園での下草刈りや、除伐などの手入れが柱。広葉樹を育て山の保水力を高めることで、西条の酒蔵が取水している龍王山の麓一帯からしみこむ地下水を潤沢にすることを目的にしています。手入れで出た除伐材はチップにして酒米づくりの水田の堆肥にしたり、炭にして川の浄化に役立てたりと、循環する仕組みも構築しました。
山のグラウンドワークと名付けた山の作業は、年間4~5回のペースで開催しています。大学や大手企業、行政、市民らの協力を得ながら継続的な活動を続け、市内外の高校生や大学生らも作業に参加するなど、裾野も広がっています。
取り組みは、一定の成果となって表れてきています。大学の研究者が継続的に龍王山の植生や地下水の水質を調べたところ、水質の悪化はほとんど見られなかった他、冬季に表層水が増加する傾向が認められ、森林整備で地下水の涵養能力が高まっている可能性が示唆された、といいます。
龍王山を源流とする西条の地下水は、きれいで腐りにくい中硬水。前垣理事長は「水は酒屋だけのものではなく、市民共有の財産。地域資源としての山、地下水が後世まで保全できるよう、今後も地道に活動を続けていきたい」と目を輝かせています。
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